一個のハンバーガー
- 木佐山礼次郎
- 2017年12月27日
- 読了時間: 2分
何故か、私は毎年、年末になると→年越しそば→一杯のかけ蕎麦と連想するのが癖になっていて、更に十数年前に見た親子の事まで思い出してしまうのです。
その頃、会社員だった私は早朝に起き、時差出勤して、会社の近くのファーストフードで朝食を摂りながらノートパソコンに小説を打ち込むという事を日課にしていました。
執筆場所はロッテリアだったりマクドだったり、ケンタだったり、その日の気分により店を替え、メニューを替えたのです。
そんな事をくり返す、とある春の一日。
中年のみすぼらしい男とセーラー服を着た少女が入って来て、私の近くの席に座ったのです。
男は浮浪者にしか見えないようなボロボロのスーツを着ていて、手にしているトレーにはハンバーガーが一個乗っているだけ。ドリンク、ポテトは無し。
そして少女はカバンだけしか持っていません。
一旦二人は席に着きました。
が、少女は立ち上がり、ハンバーガーを手にカウンターへ行って「これ、二つに切って貰えませんか?」と言ったのです。
従業員は直ぐにその要望に応えたのでしょう、少女は二つになったハンバーガーを手に、席に戻りました。
「ウォーター・ツー」
従業員の誰かが言い、直後二人の元へ水が入ったカップが運ばれたのです。
親子であろう二人は一個のハンバーガーを二人で食べ、水を飲み、何かを話していました。
私はリブサンドとポテト、シェーキなどという豪勢な朝食を食べているのが後ろめたくなり、二人の会話を盗み聞きするなどできませんでした。
只、少女は透き通るような笑顔を終始浮かべていたのです。
二人がどういう状況なのかは判りませんが、少女が今、本当に嬉しいであろう事に間違いないと思ったのです。
ただ、金銭的にはかなりピンチなのでしょう。母親は居ないのかもしれません。
そして、少女は中学校の新一年生で、ここでハンバーガーを父親と半分ずつ食べ、そして中学校に行くのだろう。今日が入学式なのかもしれない。入学祝いがファーストフードのハンバーガー半分?・・・私は思いつつ、何も聞けないまま、二人に目をやれないまま、店を出たのです。
世間にもてはやされ、そして潰された『一杯のかけ蕎麦』と今見た光景が私の心の中でオーバーラップしてしまいました。
そして、今でも時々思い浮かんでしまいます。
『一杯のかけ蕎麦」が実話であれ、創作であれ、そこまでボコボコにすることは無かったのではないか?!とも思います。
事実は小説より奇なりという言葉もあるのだから・・・。
年末になると必ず思い出してしまう。あの時の少女が立派に成長してくれている事を祈るばかりです。
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